スナックというとママが一人で切り盛りしている店もあれば、ママの他にチーママや複数の女性スタッフがいる場合もあります。
なんとなく店のスタッフも客層も、キャバクラやガールズバーに比べると年齢層が上というイメージかもしれませんが、ママが20代後半くらいで、女性スタッフが20代前半から半ばくらい、という店も珍しくありません。
もともとこの業界で働いていた方が、独立して念願である自分の店を持った、というようなパターンですね。
店の営業スタイルは
一概にスナックといってもいろいろな営業スタイルがありますが、最も多いと思われるのはカウンター越しにお酒や軽食を出したり、客の要望に応えてカラオケをセットしたり、そして営業時間は午前0時以降の深夜まで及ぶ・・といったスタイルではないでしょうか。
風営法上、午前0時以降の深夜まで営業するには「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が必要です。スナックと呼ばれる店の多くはこのような深夜まで営業しているでしょう。
注意しなくてはならないのは、深夜酒類の届出をした店の場合、客にお酌をしたり、特定の客やグループに対してずーっと談笑相手になったり、カラオケでデュエットしたりといった行為ができない、ということです。
風営法においてこれらの行為は「接待行為」と呼び、その内容が具体的に決められています。
顔なじみの常連客に「一緒にデュエットしようよ」とせがまれれば応じたくなる気持ちはわかりますが、残念ながら深夜営業の飲み屋では法律上、禁止されているのが現実です。
特に、テーブル、ボックス席がある店の場合にありがちな、次のような接客もやはり「接待行為」にあたるためできません。
- 客のそばに座って水割りを作る
- タバコの火を点けてあげる
- 席で客と一緒にお酒を飲む
- 客の手や肩に触れたりといったスキンシップをする
スキンシップはともかく、1~3あたりは「え~、それもダメなの?」と思うかもしれませんが、法律上は残念ながらダメなのです。
接待行為についてのページで詳しく解説しています。
変化してゆく取締りの基準
長年こうした営業形態の店については、風営法違反であるにも関わらず、黙認されてきたというのが実情のようです。
ところが近年、地域にもよりますが徐々に警察の取り締まりも厳しくなってきているようです。
脅すわけではないですが、実際にスナックのママが上記1~3のような接客をしたとして風営法違反で逮捕されたというケースもあります。
”風営法問題 「接待」でスナックのママが逮捕され、21日間拘留、罰金50万円の異常 外部リンク:全商連ウェブサイト”
このケースでは当事者のママが「スナックの営業は飲食店営業許可だけで良いと思っていた。風俗営業許可が必要なんて知らなかったし、そんなことは誰も教えてくれなかった」といったことを話していますが、本当に知らずに営業している方は少なくないのです。
それは、先述のように一般的にスナックと呼ばれる店の営業について従来は、地域によって程度の違いがあるにせよ、警察の取り締まりがさほど厳しくなかったことが要因のひとつと言えます。
個人的にはこれまでその業界全体としてお咎めなしで営業してこられたのに、ある時期を境にして突然「風営法違反だ」と法律をかざして取締まるというのは、既にそうした営業を続けてきた方達の権利を奪っているようにも思えます。
また地域によって警察の裁量で取り締まりの基準が違うといったことがあるなど、現在の風営法のあり方自体にひずみがあるのでは?と感じています。
「従来までがどうあれ法律なのだから守って当たり前だろう」と言ってしまえばそれまでです。しかし長年経営している方であればなおさら、深夜まで営業していることも含めて、接客やサービスに磨きをかけながら常連客との関係性を築いてお店を継続されてきたのではないでしょうか。
店が目指す方向性
以上を踏まえて、最終的にどうするかはオーナーの判断になるでしょう。やはり営業スタイルとしてお酌をしたり、カラオケでデュエットしたりという、客と近い距離感での接客にこだわるならば、「深夜酒類提供飲食店営業」ではなく「風俗営業の1号許可」をとる必要があります。
風俗営業ならば、上記のような接待行為をすることができますが、それと引き換えに午前0時以降の営業ができなくなってしまいます。(一部地域は午前1時まで可能なところもある)
そして深夜酒類の届出と風俗営業の許可は同時にとることができません。
0時以降も営業できる「深夜営業」か、接待行為を伴う「風俗営業許可」か・・どちらにするかはお店が目指す方向性と照らし合わせて十分に検討する必要があるのです。